世界の精神的指導者のひとりダライ・ラマは、大多数の人が宗教を実践していない今、
なんとかして宗教に頼らずに、すべての人間を救う方法を見つけたいと言っています。
長年にわたって仏教の教えを説いてきたにもかかわらず、宗教を信じることがすべての
人に必要だとは思っていないというダライ・ラマが、自分自身の信仰の枠を超えた
ところでたどりついた結論とは何か?――バイリンガルで、お届けします。
Actually, I believe there is an important distinction to be made between religion and
spirituality. Religion I take to be concerned with faith in the claims to salvation of one faith
tradition or another, an aspect of which is acceptance of some form of metaphysical or
supernatural reality, including perhaps an idea of heaven or nirvana. Connected with this
are religious teachings or dogma, ritual, prayer, and so on.
わたしは宗教と精神性ははっきりと区別されるべきだと思っています。宗教と
いうのは、そこで約束されている救済を信じることだとわたしは考えます。そうである
からには、一種の非現実的なもの、超自然的なもの、たとえば天国や涅槃という概念を
信じなければなりません。それを前提として、宗教の教理、儀式、祈りなどは成り
立っています。
Sprituality I take to be concerned with those qualities of the human spirit――such as love
and compassion, patience, tolerance, forgiveness, contentment, a sense of
responsibility, a sense of harmony――which bring happiness to both self and others.
それに対して、わたしの考える精神性とは、人間のたたえるべき心のありようを示して
います。愛情や思いやり、我慢強さ、寛容さ、許す心、満足する心、責任感、協調性と
いった、自分だけでなく他人にも幸せをもたらすものです。
While ritual and prayer, along with the questions of nirvana and salvation, are directly
connected to religious faith, these inner qualities need not to be, however. There is thus
no reason why the individual should not develop them, even to a high degree, without
recourse to any religious or meta physical belief system. This is why I sometimes say
that religion is something we can perhaps do without. What we cannot do without are
these basic spiritual qualities.
儀式や祈りは特定の宗教に結びついており、宗教を信じていなければ涅槃や救済も
ありえませんが、こうした心のありようは必ずしも宗教とは関係がありません。特定の
宗教や抽象的な信仰に頼らなくても、人は充分にこうした心を育てられるはずです。
わたしがときどき、宗教は人間になくてはならないものではないと言うのもこのため
です。ほんとうに人間になくてはならないのは、こうした基本的な精神性だと思うの
です。
We find that the more we succeed in transforming our hearts and minds through
cultivating spiritual qualities, the better able we will be to cope with adversity and
the greater the likelihood that our actions will be ethically wholesome. So if I may be
permitted to give my own case as an example, this understanding of ethics means that
in striving continuously to cultivate a positive, or wholesome, mind-state I try to be of the
greatest sevice to others that I can be.
精神性を養うことで、自分の心や考えを変えていけたなら、わたしたちはそれだけで
逆境に耐えられるようになり、道徳的に健全な行ないを自然とできるようにもなるはず
です。自分を例に出すのは、はなはだ恐縮ですが、わたしは道徳をこのように理解して
いますから、健全な心の状態を養おうと絶えず努力することで、できるかぎり他人の
ためになろうとしています。
By making sure, in addition to this, that the content of my actions is, so far as I am able
to make them, similarly positive, I reduce my chances of acting unethically. How effective
this strategy is, that is to say, what the consequences are in terms of others’ well-being,
either in the short-term or the long-term, there is no way to tell. But, provided my efforts
are continual and provided I pay attention, no matter what happens, I should never have
cause for regret. At least I know I have done my best.
それと同時に、自分の行動をいちいち確認しながら、その中身もできるだけよいものに
しようと努めることで、不道徳な行ないをしないようにしています。自分の行動が
その場において、あるいは将来において、他人の幸せにつながっているかどうかを逐一
考えているわけです。このやり方に、どれだけの効果があるのかはわかりません。
けれども、自分がこの努力を続け、注意を怠らずにいるかぎり、なにが起こったと
しても、わたしは後悔しません。少なくとも、自分が最善を尽くしたと知っている
わけですから。
- 作者: ダライラマ14世テンジン・ギャッツォ,His Holiness The Dalai Lama,塩原通緒
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