「汝の敵を愛せ」――この聖書からの難題に、マインドフルネスの伝道師、
ティク・ナット・ハンが答えています――バイリンガルで、どうぞ。
“Love your enemy.” ――This difficult challenge that comes from the Bible is responded
to by Thich Nhat Hanh, an evangelist for mindfulness――more to come both in English and in Japanese.
In Christianity, when you love God you have to love your neighbor, otherwise you cannot
say that you love God. Then you have to go further. You have to love your enemy.
キリスト教では、神を愛するように、隣人を愛します。神を愛するとは、隣人を愛する
ことなのです。そしてさらに進んで、敵をも愛さなければなりません。
Why do you have to love your enemy? How can you love your enemy? In the Buddhist
teaching, this is very clear. Buddhism teaches that understanding is the ground of love.
When you are mindful, you realize that the other person suffers. You see her suffering
and suddenly you don’t want her to suffer any more. You know that there are things you
can refrain from doing to make her stop suffering, and there are things you can do to
bring her relief.
どうして敵を愛さなければならないのでしょうか?どうしたら敵が愛せるのでしょう
か。仏教の答えは、はっきりしています。仏教では、愛の基盤は理解です。あなたが
マインドフルになったら、他の人の苦しみが見えてきます。苦しみが見えると、突然、
その人の苦しみを減らしてあげたくなるのです。苦しみからその人を救ってあげるため
にしてはいけないことと、その人を安心させるためにあなたにできることがわかるの
です。
When you begin to see the suffering in the other person, compassion is born, and you no
longer consider that person as your enemy. You can love your enemy. The moment you
realize that your so-called enemy suffers and you want him to stop suffering, he ceases
to be your enemy.
人の苦しみが見えはじめると、慈悲の心が生まれて、その人を敵と思わなくなります。
敵を愛することができるのです。あなたが敵と思っている人が苦しんでいて、その
苦しみをとめてあげたいと思った瞬間に、その人は敵ではなくなるのです。
When we hate someone, we are angry at him because we do not understand him or his
environment. By practicing deep looking, we realize that if we grew up like him, in his set
of circumstances and having lived in his environment, we would be just like him. The kind
of understanding removes your anger, removes your discrimination, and suddenly that
person is no longer your enemy. Then you can love him.
誰かを憎むとき、その人のおかれた状況が理解できないから、腹を立てるのです。深く
見つめる練修をすると、もし自分がその人と同じような境遇で育てられ、同じような
環境で生活してきたら、自分も同じことになるとわかります。この理解によってあなた
の怒りが去り、偏見も消えていきます。そのとき突然、その人はあなたの敵では
なくなります。その人を慈しむ気持ちが生まれてきます。
As long as he or she remains an enemy, love is impossible. Loving your enemy is only
possible when you don’t see him as your enemy any more, and the only way to do this is
by practicing deep looking. That person has made you suffer quite a lot in the past. The
practice is to ask why.
その人が敵であるかぎり、愛は生まれません。相手が敵でなくなったときにはじめて、
敵を愛することができるのです。たったひとつだけ敵を愛する方法があります。深く
見つめる練修です。むかしあなたをひどく苦しめた人を深く見つめます。なぜ
そうなったのかを自分に問う練修です。
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