映画「マダム・フローレンス!(Florence Foster Jenkins)」より
“No Music, No Life.”という、おなじみのキャッチフレーズを思い起こさせる、
このセリフは、映画「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」の主人公から
発せられると、かなり違ったニュアンスを帯びてきます。1944年、
「絶世のオンチ」なのに、カーネギー・ホールを満員にするコンサートを
成功させてしまった、その実在の人生は、あまりにも過酷で数奇。夫との
「事実婚」関係も、“Love takes many forms.(愛にはいろいろなカタチがある)”と、
普通のモノサシでは判断できない変わったものでした。アメリカで音楽や演劇に
かかわる人なら誰でも知っているという、この「伝説の歌姫」を演じているのは、
アカデミー・ノミネート19回で3度オスカーを手にした「ハリウッドの伝説」
メリル・ストリープ。1年かけてオペラの発声を習い、そこから音程をはずす
練習を重ねて、あのデヴィッド・ボウイも大ファンだったという歌声を、見事に
スクリーンに再現しています。それは、破壊的なオンチなのに、なぜか最後まで
聞きたくなってしまう不思議なパフォーマンスで、音楽に正確性を求め、つねに
「何回音程をはずしたか?」だけを評価する人には、たぶんわからないであろう
”something” が確実にあると思うのです。大笑いさせられて、観終わった後に
しあわせな気持ちになるウェルメイドなコメディ。個人的には、ピアノ伴奏者を
演じたサイモン・ヘルバーグが最高に可笑しく、ツボにはまってしまいました。
デートムービーにもオススメです。