核戦争などによる人類の終末まで、あと2分。今年に入って、有名な世界終末時計の
針が、また進んでしまいました。原子力だけでなく、遺伝子工学など、人類の存続に
かかわる、新しい科学技術の開発はとどまるところを知りません。私たちは、かつて
ないこの「終末へのカウントダウン」の時代に、何を基準にしてものごとを判断し、
行動したら良いのか?――ダライ・ラマの見解をバイリンガルでご紹介します。
Today’s challenges are so great――and the dangers of the misuse of technology so
global, entailing a potential catastrophe for all humankind――that I feel we need a moral
compass we can use collectively without getting bogged down in doctrinal differences.
今日、私たちが直面している課題はとてつもなく巨大です。そして技術の誤用の危険は
グローバルな影響を持っています。それは人類全体にとって大惨事を引き起こす
道しるべが必要だと私は感じています。それは主義主張の違いによって泥沼にはまって
しまうようなものではいけません。
How can we find this moral compass? We must begin by putting faith in the basic
goodness of human nature, and we need to anchor this faith in some fundamental and
universal ethical principles.
このような道徳的な道しるべは、どうすれば見つけることができるでしょうか?まず、
人間性の基本的な善良さを信頼するところから始めるべきです。そしてこの信念を、
何らかの根本的で普遍的な倫理的な諸原則で裏打ちしなければなりません。
These include a recognition of the preciousness of life, an understanding of the need
for balance in nature and the employment of this need as a gauge for the direction of
our thought and action, and――above all――the need to ensure that we hold
compassion as the key motivation for all our endeavors and that it is combined with
a clear awareness of the wider perspective, including long-term consequences.
こうした原則のなかには、生命のかけがえのなさへの理解や、自然には一定の調和が
必要だということの理解と、この必要性を私たちの思考と行動を方向づける尺度とする
ことなどが含まれます。そして何よりも、私たちのあらゆる企てが、思いやりの心を
第一の動機とすることが保証されなければなりません。そしてその思いやりの心には、
長期的な影響を含むより広い視野を見わたせる、明確な視線を組み合わせる必要が
あります。
Many will agree with me that these ethical values transcend the dichotomy of religious
believers and non-believers, and are crucial for the welfare of all humankind. Because of
the profoundly interconnected reality of today’s world, we need to relate to the
challenges we face as a single human family rather than as members of specific
nationalities, ethnicities, or religions. In other words, a necessary principle is a spirit of
oneness of the entire human species. Some might object that this is unrealistic. But what
other option do we have?
このような倫理的価値観は、宗教の信者とそうでない人という区別を超越しており、
全人類の幸福のために不可欠なものです。この点、多くの人が私に同意してくれる
でしょう。今日の世界の現実は、さまざまな要素が相互に根深く関連して成り立って
います。ですから私たちが直面する問題には、特定の国家、民族、あるいは宗教の一員
としてではなく、人類というひとつの家族として関わらなければなりません。
要するに、今必要とされている原理は、人間という生物種全体がひとつであると
感じ取る精神です。そんなことは非現実的だと反論する人もいるかもしれません。
しかしほかにどのような選択肢があるでしょうか?
I firmly believe that it is possible. The fact that, despite our living for more than half
a century in the nuclear age, we have not yet annihilated ourselves is what gives me
great hope. It is no more coincidence that, if we reflect deeply, we find these ethical
principles at the heart of all major spiritual traditions.
今まで述べてきたことは可能だと、私は固く確信しています。核兵器の時代を五十年
以上生きているのに、私たち人類はまだ自分たちを絶滅させていません。この事実に
私は大きな希望を抱いています。よく顧みてみれば、上のような倫理的な諸原則は
あらゆる主要な精神的な探究の伝統において、その核心に根づいていることに
気づきます。これは単な偶然ではありません。
The Universe In A Single Atom: How science and spirituality can serve our world
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