科学と仏教。ともすれば、相反するもののように思われるこの二つの関係を考える
とき、重要なヒントをあたえてくれる、科学の巨人アインシュタインの言葉が
あります。
If there is any religion that would cope with modern scientific needs, it would be
Buddhism.
現代科学に欠けているものを補うものがあるとすれば、それは仏教である。
「ダライ・ラマ 科学への旅」は、仏教の側の巨人ダライ・ラマによる、科学と仏教の
対話の可能性を探る本で、現代科学の世界観を、仏教の生命観や倫理観を通じて
検証し、ときに科学と仏教の統合を試みながら地球の未来を語ってゆくという、とても
深い内容になっています。その中から、文系で科学オンチの私でも理解でき、心に
残った記述をバイリンガルでご紹介していきます。
The great benefit of science is that it can contribute tremendously to the alleviation of
suffering at the physical level, but it is only through the cultivation of the qualities of
the human heart and transformation of our attitudes that we can begin to address and
overcome our mental suffering. In other words, the enhancement of fundamental
human values is indispensable to our basic quest for happiness.
科学の大きな利点は、物理的なレベルの苦しみを取り除くのに大いに役立つことです。
しかし、精神的な苦しみと向き合い、乗り越えていくには、人間の心が持つ優れた特性
を磨き、私たち自身の態度を変革していくしかありません。言い換えれば、幸福を追求
するには、人間としての根本的な価値観を発展させていくことが不可欠なのです。
Therefore, from the perspective of human well-being, science and spirituality are not
unrelated. We need both, since the alleviation of suffering must take place at both
the physical and the psychological levels.
したがって、私たちが健康と幸せを考える上で、精神性の探究と科学とは無関係では
ありません。私たちにはどちらも必要です。心理的な面と物理的な面と、両方の苦しみ
を取り除かなければならないからです。
There is almost no area of human life today that is not touched by the effects of science
and technology. Yet are we clear about the place of science in the totality of human
life――what exactly it should do and by what it should be governed? This last point is
critical because unless the direction of science is guided by a consciously ethical
motivation, especially compassion, its effects may fail to bring benefit. They may indeed
cause great harm.
今日、人間の生活はほとんどあらゆる場面で科学と技術の影響を受けています。
しかし、人間生活全体のなかで科学がどのような位置を占めるべきか、私たちは
はっきりした考えを持っているでしょうか――科学は具体的にどのような役割を果たす
べきなのか、そして私たちはどのように科学を管理すべきなのか?この最後の点は重要
です。なぜなら、倫理的な動機にもとづいて――特に思いやりの心(慈悲)によって
――意識的に方向づけしてやらない限り、科学は人類に恩恵をもたらさないかも
しれないからです。それどころか大きな害をおよぼすかもしれません。
Perhaps the most important point is to ensure that science never becomes divorced
from the basic human feeling of empathy with our fellow beings. Just as one’s fingers
can function only in relation to the palm, so scientists must remain aware of their
connection to society at large. Science is vitally important, but it is only one finger of
the hand of humanity, and its greatest potential can be actualized only so long as we are
careful to remember this.
おそらくいちばん大切なことは、共に生きる他者への共感という基本的な人間的感情
から、科学が決して乖離しないようにすることでしょう。一本の指は手のひらの一部
であって初めて機能します。同じように、科学者たちは社会全体との関わりを常に意識
しているべきなのです。科学は極めて重要なものです。でも人類という手のなかの一本
の指にすぎません。このことを忘れずにいて初めて、科学はその偉大な可能性を
活かしていくことができるのです。
■プライバシー・ポリシー
当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得
できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、
Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。このプログラムにおいて、
第三者がコンテンツおよび宣伝を提供し、ユーザーからの情報を収集し、訪問者の
ブラウザーにクッキーを設定することがあります。プログラムにおいて情報の
扱いについてはAmazon.co.jpプライバシー規約をご確認ください。
Amazon.co.jp ヘルプ: Amazon.co.jp プライバシー規約