しあわせになる英語 English for Happiness

日曜更新。人生に役立つバイリンガルの学び。

マインドフルネスでつくる、とらわれない心。”Peace of Mind"

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アップルの創設者、スティーブ・ジョブズが行なっていたことでも有名な
「瞑想」は、マインドフルネスを獲得するためのもの。アメリカでは、
今や、広く日常に溶け込んでおり、マインドフルネス・トレーニングの
アプリをiTunesで提供するサービスも始まっています。厳しい現代社会で
ストレスにさらされている人々が求めている ”Peace of Mind(心の平穏)” を
もたらしてくれるノウハウとして普及しているのです。このブログで度々
取り上げている、伝道師ティク・ナット・ハンが「瞑想」する時に気を
つけなければならないこと、と言っているのが、

 

Don’t be dominated by the distinction between good and evil,

thus creating a battle within oneself.

善悪の観念にとらわれてはいけません。内部で葛藤が生じるからです。

「The Miracle of Mindfulness」より

 

善悪の観念をも超越し、ただあるがままを意識することで得られる
「ピース・オブ・マインド(心の平穏)」は、言ってみれば「とらわれない心」
をいかにつくるかということ。これは、徳川将軍家剣法指南役の柳生新陰流
に代々伝わる剣法の極意「無心」すなわち、「精神を集中しながら、しかも
心をどこにもおかないこと」にも通じるものです。つまり、勝とうと思えば
勝つことばかりに心がとらわれ、焦りが生じてスキができ、負けてしまう、
だから「無心」こそが大切だと言うのです。考えてみれば、サムライたちは
仏教」と「禅」から多大なる影響を受けており、このふたつのどちらとも
深い関係があるマインドフルネスが、サムライの極意「無心」あるいは
「とらわれない心」をつくる、というのは自然な流れかもしれません。
現代のサムライであるビジネスマンが、「とらわれない心」で集中力を高め、
成功のための ”Inspiration(ひらめき)” を得るための「瞑想=マインドフルネス・
トレーニング」。英語で、たんなるハウツーだけでなく、「その心」も学び
たいという方は、数あるティク・ナット・ハンの原書にチャレンジしてみては
いかがでしょうか。

 

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マインドフルネスの秘密を教える英語。 “To master our breath is to be in control of our bodies and minds.”

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「気づきの奇跡 暮らしのなかの瞑想入門(The Miracle of Mindfulness)」より

 

「呼吸をマスターするとは体と心をよく制御することです。」

今、アメリカ、そして日本のビジネスマンたちが大注目している、「マインドフル
ネス(気づき)」を上手く獲得できるかどうかは、「呼吸をマスターする」ことに
かかっている。その理由を、本家本元の伝道師ティク・ナット・ハンは、こう
説いています。

 

Breath is aligned to both body and mind and it alone is the tool which can bring
them both together, illuminating both and bringing both peace and calm.

呼吸は体と心の両方に関わっているので、呼吸だけが体と心をひとつにし、
それらを明るく照らし(気づき)、平和と静けさをもたらすのです。

 

ちょっとウンチクになってしまうのですが、そもそも、なぜ「マインドフルネス」
は「気づき」と訳され、ストレスフルな現代社会の救世主的な存在になっている
のか。それは、「過去や未来にとらわれず、いまこの時のリアリティ(現実の姿)を
ありありと意識する」という意味で、「マインドフルネス」は「気づきでいっぱい
→気づき」であり、現在を置いてきぼりにして、過去や未来に「気が散っている」
現代人が、バラバラになった自分の意識をひとつに取り戻すために有効な「ツール」
なのです。ここでひとつお知らせ。今回取り上げた原書は、瞑想のやり方に関する
詳しい記述を含んでおり、ティク・ナット・ハンの他の書籍と比べると、英語は
かなり難しい、と思われます。チャレンジしたい方は、日本語訳と合わせて学ばれる
と良いのではないでしょうか。私の場合、先に日本語を読み、興味のあるフレーズが
原書ではどうなっているかを拾い読みしていく、という学習法をとりました。要は、
この興味深い内容が、頭に入るかどうかだと割り切ったわけです。もちろん、英語の
読解力に自信のある方は、いきなり原書に取り組まれてもいいと思います。音声で
学びたい方のために、CDも出てますよ。

 

サスペンスの巨匠ヒッチコックに学ぶ映像言語。”Think visually.”

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“the Master of Suspense(サスペンスの巨匠)”ヒッチコックは、”Think visually
(視覚的に考える)”巨匠でもあった、とわかるドキュメンタリー、それが
ヒッチコック/トリュフォー」ではないかと思います。彼は言います。
映画にとって、

 

Logic is dull.

論理は退屈なもの。

 

スクリーンに映った時に、どう見えるか? がすべてであり、そのための、
さまざまな映像言語を開発したパイオニアヒッチコックなのです。あの
「セブン」ゴーン・ガール」のデヴィッド・フィンチャーも、この映画の
元となったロングセラーの名著「映画術 ヒッチコックトリュフォー」で
カット割のイロハを学び、「CURE」「ダゲレオタイプの女」の黒沢清も、
自分にとっての「バイブル」と言い切っています。聞くところによると、
最近の子供は、新しいことを学ぶのに、本を読むよりも、まず、You Tube
検索するのだとか。そんな時代に生きる我々にとって、映像言語の基本を
知っておくことは、けっして無駄なことではないでしょう。ただし、この
ドキュメンタリーをこれから観るという方へ、ひと言。なるべく多くの
ヒッチコック作品を観ていたほうが、この映画は楽しめると思います。
少なくとも、「めまい」と「サイコ」だけは、事前に観ておいたほうがいい。
そうでないと、種明かしを先に知ってからマジックを観るのと同じになって
しまいますから。もちろん、未知のものを知るドキュメンタリーとして良く
できていることに変わりはありません。それから、英語を学んでいる方へ。
巨匠が映画について語る英語を、たっぷり聞けますよ。

 

ボブ・ディランの凄さを物語る英語。 “Play it fucking loud!”


No direction home ending scene

映画「ノー・ディレクション・ホーム」より

 

ミュージシャンとして初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランは、
つねに既成概念にはまることを嫌う反骨の人であり、その心意気を表した
有名な言葉が、これです。1966年、ライブにおいて、今までの
アコースティック・ギターをエレキ・ギターに持ち替えて演奏しようとした
「フォークの神様」に飛んだ「Judas(裏切り者)!」という野次。これに対して
ディランは、少しもひるむことなく、バンドメンバーを鼓舞する言葉を
放ってから、ロック史上に永遠に残る名曲「Like a rolling stone」を
歌い始めたのです。

 

Play it fucking loud!

大音響で演奏してやろうぜ!

 

アーティストにとってファンというものは、ありがたいと同時に、ヘタを
すれば変革を許さない足枷にもなってしまう存在。望まれるヒット曲を
繰り返して歌い、スタイルを変えないでいれば、それなりの延命をはかる
こともできるでしょうが、「革命児」ボブ・ディランは、それを良しと
しませんでした。ディランは歌います。

 

When you ain’t got nothing, you’ve got nothing to lose

何も持たないってことは、何も失わないってことだ

“Like a rolling stone”より

 

自分が築き上げてきたキャリアにしがみつかず、新しいことに挑戦し続けた
ディランに、あらためて敬意を表したいと思います。ホント、カッコいいぜ!

 

 

 

「マダム・フローレンス」の数奇な人生。 “Music has been and is my life.”

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映画「マダム・フローレンス!(Florence Foster Jenkins)」より

 

No Music, No Life.”という、おなじみのキャッチフレーズを思い起こさせる、
このセリフは、映画「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」の主人公から
発せられると、かなり違ったニュアンスを帯びてきます。1944年、
「絶世のオンチ」なのに、カーネギー・ホールを満員にするコンサートを
成功させてしまった、その実在の人生は、あまりにも過酷で数奇。夫との
事実婚」関係も、“Love takes many forms.(愛にはいろいろなカタチがある)”と、
普通のモノサシでは判断できない変わったものでした。アメリカで音楽や演劇に
かかわる人なら誰でも知っているという、この「伝説の歌姫」を演じているのは、
アカデミー・ノミネート19回で3度オスカーを手にした「ハリウッドの伝説」
メリル・ストリープ。1年かけてオペラの発声を習い、そこから音程をはずす
練習を重ねて、あのデヴィッド・ボウイも大ファンだったという歌声を、見事に
スクリーンに再現しています。それは、破壊的なオンチなのに、なぜか最後まで
聞きたくなってしまう不思議なパフォーマンスで、音楽に正確性を求め、つねに
「何回音程をはずしたか?」だけを評価する人には、たぶんわからないであろう
”something” が確実にあると思うのです。大笑いさせられて、観終わった後に
しあわせな気持ちになるウェルメイドなコメディ。個人的には、ピアノ伴奏者を
演じたサイモン・ヘルバーグが最高に可笑しく、ツボにはまってしまいました。
デートムービーにもオススメです。

 

アンガー・マネジメントを成功させるには。 “Anger is like a howling baby, suffering and crying.”

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ティク・ナット・ハン著「怒り(anger)」より

 

なかなか抑えられない怒りの感情に、どう対処するか? いわゆるAnger Management
は、ビジネスの現場や毎日の暮らしを円滑にすすめる上で欠かせない重要なノウハウ。
怒りをはじめとするネガティブなストレスは、健康に悪影響を及ぼし、放っておくと
生命にかかわる「キラー・ストレス」になってしまう、と言われているくらいです。
マインドフルネスの伝道師ティク・ナット・ハンによれば、

 

Anger is like a howling baby, suffering and crying.

怒りは、泣きわめく赤ん坊のようなものです。

 

そこで、”The baby needs his mother to embrace him.” 怒りの感情を否定したり、
心から追い出そうとしないで、赤ん坊を抱きしめる母親のようになることが大切だ
というのです。キー・ポイントになるのが、マインドフルネスの呼吸法。ゆっくり
息を吸い、そして吐きながら、泣きわめく赤ん坊のような「怒り」を、やさしく
ケアしてあげるのが、最も効果的なAnger Managementにつながるのです。「怒り」
も、あなたの一部。けっして切り離したり、消滅させることはできない。それは
逆効果になる、と説くティク・ナット・ハンの言葉は具体的でわかりやすく、
むずかしい英語の言い回しは、ひとつも使っていません。現代を生き抜くのに
必要な知恵を、英語で学ぶことができる、一石二鳥の名著。オススメです。

「ブレードランナー」で恋愛を学ぶ。 “Do you trust me?”

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映画「ブレードランナー(Blade Runner)」より

 

1982年に発表された「ブレードランナー」は、SF映画の金字塔と評され、
いまだにその影響力が衰えない傑作ですが、来年、続編が日本で公開される
そうです。その中で、ハリソン・フォード演じる主人公デッカードが、
人造人間レプリカントのヒロイン、レイチェルに問いかけるセリフが、
これです。

 

デッカード「Do you love me?」レイチェル「I love you.」

デッカード「Do you trust me?」レイチェル「I trust you.」

 

関係が深まれば深まるほど、相手を傷つけてしまうかも知れない、恋愛において、
ただ「愛している」だけでは足りず、「信じている」かどうかが大問題。ましてや、
この映画の中のデッカードは、レイチェルを殺すことが職業なので、このやりとりは、
いやでも重要になってくるのです。思えば、傑作ぞろいだった今年の邦画の中の一本
「怒り」も、「愛する」ことはある意味簡単だが、相手を「信じる」ことは難しい、
という切実なテーマを、見事に映像化していました。世界に、SF映画における映像表現
のひな形を示しただけでなく、私にとっては、「I love you.」プラス「I trust you.」の
大切さを教えてくれた映画「ブレードランナー」。来年の続編が、待ちきれません。

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