現代社会に生きる私たちが見失ってしまった「愛すること」の本当の意味とは?「自由
からの逃走」など数々の名著で知られる心理学者エーリッヒ・フロムの解説に耳を
傾けてみましょう――バイリンガルで、どうぞ。
What is the true meaning of “love,” of which has been lost sight by us living in
contemporary society? Let’s listen to the commentaries of Erich Fromm who is
a psychologist well-known for his masterpieces such as “Escape from Freedom.”――more
to come both in English and in Japanese.
The desire for interpersonal fusion is the most powerful striving in man. It is the most
fundamental passion, it is the force which keeps the human race together, the clan, the
family, society. The failure to achieve it means insanity or destruction――self-destruction
or destruction of others. Without love, humanity could not exist for a day.
自分以外の人間と融合したいというこの欲望こそが、人間のもっとも強い欲望である。
それはもっとも根源的な熱情であり、人類を、部族を、家族を、社会を結束させる力
である。融合を達成できないと、正気を失うか、破滅する。自分が破滅する場合も
あれば、他の人びとを破滅させる場合もある。この世に愛がなければ、人類は一日
たりとも生き延びることはできない。
Yet, if we call the achievement of interpersonal union “love,” we find ourselves in
a serious difficulty. Fusion can be achieved in different ways――and the differences are
not less significant than what is common to the various forms of love.
しかしながら、人間どうしの結合の達成を「愛」と呼ぶと、たいへん面倒なことに
なる。というのも、融合を達成するにはいろいろな方法がある。しかも、そうした方法
どうしのちがいは、愛のさまざまな形どうしのちがいと比べても、けっして小さいわけ
ではない。
Should they all be called love? Or should we reserve the word “love” only for a specific
kind of union, one which has been the ideal virtue in all great humanistic religions and
philosophical systems of the last four thousand years of Western and Eastern history?
それらをすべて愛と呼ぶべきだろうか。それとも「愛」という言葉は、西洋および東洋
の四千年にわたる歴史における、すべての偉大な人間中心主義的な宗教や哲学体系に
おいて理想的な徳とされてきた、特別な種類の結合を意味する言葉として、とっておく
べきだろうか。
As with all semantic difficulties, the answer can only be arbitrary. What matters is that we
know what kind of union we are talking about when we speak of love. Do we refer to
love as the mature answer to the problem of existence, or do we speak of those
immature forms of love which may be called symbiotic union?
言葉の意味というのはいつでも厄介なものだが、ここでも、答えは恣意的 (しいてき) な
ものとならざるをえない。大事なのは、「愛」と言ったとき、どういった種類の結合の
ことを言っているのかを、私たちが了解していることだ。「愛」と言ったときに、実存
の問題にたいする、熟慮の末の答えとしての愛のことを指しているのか、それとも
共棲的結合とでも呼びうるような未成熟な形の愛のことを言っているのか。
In contrast to symbiotic union, mature love is union under the condition of preserving
one’s integrity, one’s individuality. Love is an active power in man; a power which breaks
through the walls which separate man from his fellow men, which unites him with others;
love makes him overcome the sense of isolation and separateness, yet it permits him to
be himself, to retain his integrity. In love the paradox occurs that two beings become one
and yet remain two.
共棲的結合とはおよそ対照的に、成熟した愛は、自分の全体性と個性を保ったままでの
結合である。 愛は、人間のなかにある能動的な力である。人を他の人びとから隔てて
いる壁をぶち破る力であり、人と人とを結びつける力である。愛によって、人は
孤独感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、自分の全体性を
失わない。愛においては、ふたりがひとりになり、しかもふたりでありつづけるという
パラドックスが起きる。
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